北欧、アジア、北米を制したアントレプレナーVivaldi ・ Orbweb 創業者  冨田龍起

 

 スタンフォード大学の膝元 Palo AltoにOfficeを構えSVJEN(シリコンバレー日本人起業家ネットワーク)の代表を務めながらアントレプレナーとして活躍する冨田龍起さんにお話を伺った。

1891年にパシフィック鉄道の創立者でもある大富豪リーランド・スタンフォードによって設立。

 

*鹿児島高専大学でエンジニアの勉強後、中電へ就職。その後北海道大学で経済学部経営学科のBAを取得され、ノルウェーの Opera Software社へ就職。エンジニア→ビジネス・マーケティングと歩まれております。

 子供のころから大のメカ好きで毎日のように遊んでいたのを覚えています。まずは故郷の鹿児島高専大学で機械工学を学び、丁度そのころ、学生インターンの機会があり、一カ月ほど三菱重工神戸造船所の原子力プラント技術部に配属され、今は廃炉が決まっていますが、高速増殖炉「もんじゅ」の製造技術などを学んだ記憶があります。

’夢の原子炉’と呼ばれていた高速増殖炉「もんじゅ」

 机上で勉強していた機械工学が現実の世界でどのように使われているかを目の当たりにし、原子力を利用し電気を作りだす技術(日本の原子力技術は世界最高水準)に感動を覚え、中部電力に就職を決意!!

 素晴らしい先輩や上司に囲まれていたのですが、 私に取って、中電は少し
大企業体質だな~と感じるようになり、新入社員ながらも新しい提案などをしていたのですが中々受け入れられず日々与えられた仕事をこなしているだけの毎日に悶々としていました。

 そのころ Marc Andreessenが Netscapeを立ち上げた頃で1年半でNasdaq上場するなど、企業価値が短期間で数百倍になるのを目の当たりにし、そしてウェブが作り出す新しい可能性に衝撃を受けて、ネット業界で働きたいと思うようになってきました。

 エンジニアから、経営に興味を持ち始めたのもこの頃だと思います。当時、個人的にその開発方針に賛同してノルウェーの Operaというブラウザを、一ユーザーとして使用していたのですが私は、日本人のユーザーからバグ等の問題があがるごとに掲示板などを通してレポートしていたのです。

ノルウェーのブラウザ会社であり、2016年中国の企業に売却されている。

 

 そうしている間に当時のオペラのファウンダーのJonから「お前は面白いからノルウェーにきてうちで働け!」と言われたのがOperaに入社したきっかけです。

 2001年~2004年はノルウェーで過ごしたとても学びの多い3年間でした。当時Operaは急成長しており世界展開を図っていた為、私は2005年東京オフィス開設に伴いアジア全域の営業・マーケティング担当として日本に帰国。

 2001年にノルウェーに行った時には30人程度の会社でしたがIPOした2005年には500人程度にまでになっていました。東京に帰国後も中国・韓国・台湾・シンガポール・インドネシアの事業立ち上げを経験できたのはよかったです。

 機械工学の世界から入りましたが次第に「人と人から生まれる複雑性」そういった事に興味を持つようにもなりました。

Opera時代の冨田さん https://www.youtube.com/watch?v=LVlsU8s0vOY

*Vivaldi を2013年創業しながら、 2014年UC BerkeleyでMBAを取得されております。

 欧州、アジアと事業の立ち上げを経験して、Opera のアメリカオフィスの立ち上げで ベイエリアにきたのがそもそものきっかけです。会社がIPOして学んだことも非常に多いの ですが、同時に課題も増えていました。経営陣同士での意見の相違なども目立つようになり12年働いたOperaを退職し、MBA取得を決心。

 私は、思い立ったら即実行するタイプなんでしょうね。(笑)2013年にJonと立ち上げ共同創業者となったVivaldi社と同時並行でMBAの勉強をしていたので、当時は結構大変でしたね。

共同創業者となったVivaldi

 MBA取得する人は在職中に留学したり、休職中に勉強するのが普通だと思いますが私はスタートアップ立ち上げながら勉強していましたので、両立に苦労しました。

 もう少し早く(若いうちに)MBA取得しておけばよかったな~と思いますがもう遅いですけどね。(笑)

 当時のブラウザは開発の方向性が画一されていると感じていたのですが、Vivaldiは一人一人にカスタマイズ化されたブラウザを作りたいという思いで、Operaの創業者のJonと立ち上げました。

 Jonのブラウザビジネスに対する熱意は半端なくそれに圧倒される感じで私もジョイントした感じです。創業6年でユーザー数も100万人を超えましたし、社員数も40人となり今のところ会社も順調に成長していますね。

 10年Operaでブラウザのビジネスをやっていたのでもう少し楽にVivaldiも成長させる事ができるかなと思っていたのですがこれが思いの他大変でした。(笑)

0→1を作る大変さを改めて肌で感じた時期だったかもしれません。

*Vivaldi設立後2017年に Orbweb Inc.を設立し、アントレプレナーの地位を確立しました。

 Opera時代の同僚が始めたビジネスの資金調達の手伝いをしたのがきっかけでした。しっかりと組織化すれば急成長する可能性が大きかった事もあり、色々と話あった結果、CEOという形で経営に携わっています。

 組み込みソフトウェア、コンピュータビジョンというAI技術とクラウドプラットフォームをメーカーやエンタープライズ向けに提供するビジネスをしています。

 例えば、我々のソフトウェアは多くの監視カメラなどに搭載されています。クライアントとしては、PCメーカー、家電メーカー、IOTデバイスメーカと複数業務提携をしております。

*資金調達、IPOなどのご経験、それから学んだ事など教えて下さい。

「投資家といかにビジネスの方向性が共有できているか」これが一番重要な事だと思います。ビジネスが好調の時はよいのですが調子が悪くなると投資家との意見の相違が出てくることもあります。

 起業家の立場からお話させて頂ければ、会社が苦しい時どれだけ投資家がサポートをしてくれるかはとても重要だと思います。ビジネスが大変な時こそ、取締役会が一丸となって、お互いの知恵を絞りあって、困難な局面を乗り切ることで、会社は成長していくものと考えています。

 そこは人間関係、お互いの信頼関係 に尽きると感じています。

* 尊敬・影響を受けている起業家がいたら教えて下さい。

 付き合いは長いのですが、Operaの創業者でもある Jonの「熱意」と「ユニーク」な部分は自分もかなり影響を受けていると思いますね。人と同じ事をしていては成功する確率も下がってしまいます。

 メディアなどのトレンドに惑わされずいかにユニークなアイデアを常に自分の頭で考えて、人から何と言われようと実行できるか。これが重要だと思います。

*若手起業家、これから起業を考えている人にアドバイスをお願い致します。

 「アントレプレナーって、すごいリスク取ってますよね?」とよく言われるのですが、自分ではそれほどリスクを取っているとは思っていません。

 他の起業家の方もそうかもしれませんが、リスクを積極的にとっている訳ではなく、成功する目論見があるので、それを実現するために知恵を絞っている、その過程が楽しいと感じています。

 事業が失敗するというリスクがもちろんありますが、むしろ、自分達が考えて作り出したものが与えるインパクト、その可能性 にワクワクしてしまうんす。

 リスク<可能性

 人によって性格もあるのかもしれませんが、恐らく皆さん大好きな事をやっているときはそうなんじゃないでしょうか。

 自分が興味があり楽しめる事を見つける事が出来て、いてもたってもいられなくなる。それが世の中にインパクトを与えることが出来る事を考えたら、ワクワクすると思います。

 そして、それを実現するのは自分しかいないと思えると、起業という選択肢は、多くの人にとって、とても自然なものになるのではないかと思います。

冨田龍起  プロフィール

 

1992年鹿児島高専大学 機械工学科修了
1996年中部電力入社
1999年北海道大学経済学部経営学科卒業
2001年Opera Software入社 ノルウェーに移住
2005年同社アジア担当日本法人代表として日本に帰国
2012年米国法人社長、 GMとして米国オフィス開設
2013年Opera創設者の Jon Stephenson Tetzchnerと
Vivaldi Technologies を設立
2015年 UC Berkeley にてMBA取得
2017年 Orbweb inc 設立