今後100年間で自分が最もワクワクできる事、これを突き詰めた際に私が辿り着いたのが「バイオテクノロジーでした。」こう断言する 本蔵 俊彦さんに話を聞いた。
*本蔵さんのプロフィールを拝見させて頂きました。東大大学院助手→証券会社→マッキンゼー(コロンビア大学にてMBA )→産業革新機構→起業と多種多彩な業界を経験されております。(4人分くらいの人生を生きておられますね)
小さい頃から何でも挑戦する事が大好きで、こんな性格も多少影響はあるのかもしれません。両親も小さい頃から私を「自由」に育ててくれましたが、自由と言ってもお小遣いは殆どもらえなかったので自分のやりたい事があるなら自分で稼ぎなさいという「自由」でしたけどね(笑)。
そんな事もありすでに中学2年生から新聞配達のアルバイトをしてました。小学校から大学まで、区立、都立、国立で浪人時代を除けば、今まで塾というものは一切行ったことがありませんでした。
スポーツは小さい頃から大好きだったので、小学校ではサッカー部主将、高校(都内で2位の実績)、大学でもアメフトをやっていたので( 東京大学運動会アメリカンフットボール部WARRIORS)勝負へのこだわり、勝つためには何が必要なのか?そんなことを考えるのも大好きな学生時代でした。
努力すること・成長することへのこだわりは、人一倍あったのかもしれません。
今まで職歴だけをみますと一見バラバラの業界に見えるかもしれませんが、全て「バイオ」という一本の筋が通っています。
証券会社時代は、バイオベンチャーのアナリストとして、各CEOにお会いさせて頂いたり、財務諸表を見たり、現在の株価状況などをチェックして各社の評価をしていました。
沢山のバイオベンチャーを見ていると成功している企業とそうでない企業の違いが段々わかってくるようになったのです。いくらよい技術力を持っていても、マネージメント力、資金力、販売力、マーケティング力等の「総合力」がないとビジネスでは勝てない。
学会で素晴らしい研究発表をしたとしてもそれがビジネスとして成功するかは別の話という事ですね。マッキンーゼー時代も「製薬・ヘルスケア業界で活躍をしたい」という目標を明確にしておりました。
3カ月単位で結果を出さなくてはいけないハードな会社でしたが、ヘルスケア・バイオ・製薬(創薬)の経営陣の方々のコンサルティングをさせて頂きながら、結果を出さなければ次の仕事も貰えない厳しさがありましたが、何とか6年間勤めることができました。
その間に2年間コロンビア大学に留学をさせてもらい
MBAも取得。産業革新機構(ファンド)でも同じくバイオベンチャーへの投資と育成のみをやっておりました。
*2013年1月6日会社を阪大発のベンチャー企業として創設しております。産業科学研究所と本蔵さんが出会われたきっかけ・会社設立の経緯を教えて下さい。
産業革新時代の話になりますが、大阪大学産業科学研究所の谷口教授(半導体)、川合教授(DNAナノテクノロジー)に2012年10月にお会いしたのがきっかけです。
当時彼らも自分達の研究成果をスタートアップにしたいという事を考えておられました。
そして東大時代の私の元上司である森下先生(セルゲンブリンと同じ研究室にいた事もある情報処理・データーマイニングの第一人者。アルゴリズムを使ってゲノムを解析する研究者)とお二人を引き合わせ優れたシークエンサーになる為にはどうすればよいのか?というMTGを設定したのです。
アカデミック的なアイデアと私が今まで培った
経験が組み合わさればスタートアップができると確信し、産業革新機構を辞めてクオンタムバイオシステムズを設立しました。
谷口教授、川合教授と初めてあってから3か月後には自分の会社を設立する、これはマッキンゼー時代に学んだスピード感ですね。(笑)
会社設立後3カ月で1.5億円をエクイティによる資金調達し、2億円を助成金で調達しました。
*大阪・東京でオフィスを構えながらもMenlo Park(シリコンバレー)にオフィスを構えられました。理由をお聞かせください。
ビジネスもスポーツも似ているところは沢山あると思います。ビジネスを成長・成功させる為にはベストのメンバーを揃える。その時点でベストでなくても将来的にはそのポテンシャルが多大にある、この一語に尽きると感じております。
成長し続けるチームを作るにはそういった人材が沢山いる所に行くしかない!この業界では、米国は2周ほど先回りしており特にここメンロパーク一帯は、そういった会社が集積しているからです。
本気で勝ちたいと思っているからベストなチームを作りたいと思っています。
*前回のセミナーでもお話をされておりましたが、経営者、創業者として一番大切にされていることがありましたら教えてください。
「リーダーの役割は非常にシンプルで明確な方向性を示すことに尽きる」というロイヤル・ダッチ・シェルのCEOの言葉を常に念頭におくようにしています。
多様性のある人材を抱える弊社において多様性に合わせたマネージメントをするのではなく、シンプルでクリアな方針を繰り替え言い続けるようには努力しています。まだまだ私も勉強中ではありますが(笑)
*これから起業を考えている若者にアドバイスをお願い致します。
考え方の問題だと思いますが、投資を受ける時もそうかもしれません。ビジネスを始める際には「絶対成功します!・絶対成功させる!」と考えるのも非常に大事だと思いますが、あわり気負わない方が私は良いのかと思います。
私は常に「絶対に成長してみせる!」と考えるようにしています。万が一、ビジネスが失敗したとしても自分が成長できればそれでよい、と思うくらいの楽観的に考えることが実は重要なんではないかと最近は思います。
ぜひ「初めの一歩」を今日踏み出してみてください。
本蔵俊彦 プロフィール
1999年 東京大学理学部化学科卒業
2001年 東京大学大学院理学系研究科化学専攻修士課程修了
2002年 東京大学大学院情報処理工学研究科特任助手(ヒトゲノム解析等の研究)
2003年 新光証券(現 みずほ証券)バイオベンチャーのアナリスト
2005年 マッキンゼー入社、エンゲージメントマネージャー、製薬企業プロジェクトに従事
2009年 コロンビア大学にてMBA取得
2011年 産業革新機構戦略投資部ディレクター ライフサイエンス分野担当
2013年1月 クオンタムバイオシステムズ 設立