ConnecPath 創業者 真田 諒

Vol 5

「自分が本当に大好きな事」が見つかった時は、起業をする時だと思う。「それ」がまだ見つかっていない人は日々それが何なのか「自分の頭」で考えるべきだと思う。大企業で働いている人も、お子様がいらっしゃる主婦の方でも、学生でも、子供でも。トライ&エラーを繰り返しながら、失敗が成功の過程にあると思って突き進んでいれば、必ず目標に辿り着くはず。以前インタビューした 本蔵さん Toshihiko Honkuraの言葉で「絶対に成功してみせる→絶対に成長してみせる という発想が大事だと思います。」という言葉がとても印象的。失敗をもろともせず Ed Tech (Education × Technology)分野で活躍し続け  ConnecPath Inc. を運営する  真田 諒 (Ryo Leo Sanada) さんに話を聞きました。常に前向きで挑戦し続ける真田さんのお話。失敗談とその分析話も赤裸々に教えて頂きました。大企業から起業を考えている方、
教育分野で起業を考えている方におススメのお話です。

*アスデッサン、ConnecPathと今まで教育・キャリア支援分野に特化されたビジネスに従事しております。理由をお聞かせください。

東京葛飾区で育ち、地元の公立小中学高、中堅クラスの都立高校に通いました。友人たちは至って普通の生徒たちで、皆それなりの努力や研鑽を積んでいたのですが、猛勉強するわけでもなければ、社会や世界と繋がって刺激を求めていく雰囲気ではありませんでした。

大学も私大の明治大学商学部に入学をし、最初の2年間は、自分で物事を起こしたり、徹底して結果を出していくような、強い動機に裏付けられた行動を起こしていく人に会うことはあまりありませんでした。

しかし、大学時代の後半から、学生団体を立ち上げたり、NPOを創業する仲間たちに出会い、自分も次第に感化され、学生団体を4つ立ち上げるなど、自分で物事を起こすことの醍醐味を知ることとなりました。

そうした実績も評価されてか、明治からは4年に一人と言われている最難関の三菱商事に内定を頂き、そこで働く中で私の考え方が大きく変わっていったのです。

周りの同期の環境も今までの友人関係とはがらりと変わりよい意味で刺激を受けました。

「生まれ育った環境・受けてきた教育が子供の考えや将来に大きく影響するんだな、そして親が子どもに見せる世界や会わせる人の幅が広く深いほど、成長の伸び代に大きな影響を与えるのだな 」。とういう教育の大切さ、環境の大切さにその頃気が付き始めたのです。

より多くの情報・教育の機会を与えられていない子供と、そういった情報を小さいころから親から自然に、または第三者から強制的に与えられている子供とを比較したら「差」がつく現実に「悔しさ」を感じたものでした。

その「思いを」をビジネスモデルの根源として「誰にも、平等に教育のチャンスと情報を提供したい」と考え、キャリア教育を行うNPO法人アスデッサンを、副業ベースで友人と共同創業しました。

7年ほど経った頃、アスデッサンの実績が着実に積み上がりつつも、もっとスケーラビリティのある形でやるべきだと思いつつ一方で、副業の社会人たちで運営するアスデッサンを不用意に規模拡大に導くのは難しいとの結論に至り、一念奮起して、シリコンバレーでエドテック(教育テック)事業を創業する覚悟を決めたのです。

これがConnecPath(www.connecpath,com)です。同社のビジネスは、紆余曲折を経て、現在は、卒業後のキャリアデザイン形成も一気通貫した米国大学受験生向けのコンサルティング事業に至っています。

米国の大学受験は、日本でもそうですが、偏差値やランキングありきになっており、自分は何者で、将来何になりたくて、そのために何を学ばなければならないのかといった、本質論が置き去りになりがち。

それを後回しにしてIvy Leagueなどに合格することは、瞬間的に見れば成功のように思えるかもしれませんが、結局困るのはその後です。

あとでアップデートしていくことが前提でいいので、しっかり自身を見つめ、確たる動機形成を行い、明確な目的を持って大学に入学するという、一連の体験を提供することが弊社の現在のミッションです。

一人一人が自分の今と未来にコミットすることで、個人の人生に対する幸福感や満足度が増すだけでなく、高いパフォーマンスの成果をもたらし、世の中がもっと良くなっていくことと、強く確信しています。

*今回ビジネスモデルを軌道修正して3回目の挑戦をされております。成功率1割とも言われるスタートアップ業界の中で1度目、2度目を踏まえて今回どのように修正して最挑戦を考えておりますか?

まず、1度目の挑戦では、AI(人工知能)技術を活かした、チャットボット(自然言語を処理し、適切な回答を行う会話型ロボット)を開発しました。

アメリカの高校の統計をみると約9割の高校生が公立に通っており、私立は1割のみです。(日本の場合は約67%が公立。約32%が私立)理由としてはアメリカの私立の学費が高いという訳ですね(笑)。

逆に私立はその恩恵も大きいわけで、キャリアアドバイザー(カレッジアドバイザー)が一人に対して生徒40~50名程度を指導できます。これが公立になると、キャリアアドバイザー一人に対して約491名程度になってしまうのです。

統計上では一人の生徒が話せるのは年間約10分間だけ。これでは相談しようにもできないだろう、であれば、せめて頻繁に聞かれる質問をAIに記憶させ、24時間365日回答できるようなアシスタントを作り、高校に販売したらいいのではないか。こう考えた訳です。

しかし、アップル(Siri)やアマゾン(Alexa)が莫大な開発費用を投じても人間と中身のある会話自体が非常に難しい今の時代に、大学受験相談(=人生相談)をスタートアップが開発することは容易ではなく、導入してくれる高校は見つかりませんでした。創業から半年程度で、このビジネスモデルからは撤退しました。

次に思い立ったアイデアは、人工知能がダメなら、実際に人間がアドバイスをすればいい、そういう人間に簡単に繋がれるプラットフォームを作ればいいという考えから、モバイルアプリで受験アドバイスを欲しい高校生と、隙間時間を使ってお小遣い稼ぎたい大学生をマッチングし、少額で受験アドバイスを行えるサービスでした。

開発開始から数か月で世に放つことができたのですが、これもうまくいきませんでした。

理由を随分と考えましたが、至った結論は、「顕在市場からの乖離」。最初は、自分が目で見てわかるような実世界の中に、人々が抱えるペインを見つけます。

私のビジネスの例で言えば、大学受験を控えた高校生と、その親です。高校生や親と話すうちに、彼らが、これがあったらよかった、ここが困っている、などの話を聞きながら、サービス設計をしていきます。

困っているのだから、ソリューションを提供すれば、価値があり、金も動くだろうと、こう思うのですが、ここに落とし穴がありました。

ペインには、金を払ってでも解決したい深いペインと、質問されたらペインとは回答するが実際に金を払ってでも解決したいほどの深さがないペインがあります。

金で解決したいペインは、商品・サービスの購買行動につながり、この売上の集積が、市場規模と呼ばれるものを形成します。つまり、既存で売れているものは何か、それはどんなサービスで、どのような形で提供されているか、プライシングはどうなっているかなどの分析がおろそかになったまま、あれやこれやとプロダクトを開発していたのです。

これが決定的な発見となり、自分の中で、なぜチャットボットとモバイルアプリが売れなかったのかが理解できました。すなわち、いずれもAIやモバイルアプリなど、エドテック事業を生業とする会社だからテックを取り入れなければ「ならない」など、方法論が先に立ってしまい、どこでお金が動いているかが置き去りになっていたことに気づいたのです。

もちろん、誰も気づいていないニーズを掘り当てる、完全なる新規市場創出の様なプロダクトもあります。しかし、誰も気づいていないニーズを見つけるのは、天才的なセンスか偶然の悪戯でもない限り見つけるのは本当に難しいと思います。

私の場合は、そこを狙うのではなく、まずは顕在市場(米国大学受験コンサル市場、推定市場規模1000億円)に立ち返り、売れているサービスは何かを紐解くところから3回目の挑戦がスタートしました。

その結果、世に溢れる大学受験コンサルサービスには、上位ランキングの大学に合格するテクニックには長けていても、受験生の長期的な成功を視野に入れたサービスが行われていない実態にあることに気づき、その辺りを自社の強みとしたサービス設計をするに至りました。

私自身、これがどれほど市場に受け入れられるか見ていくのが楽しみです。

* 同世代の起業家、これから起業を考えている方々へ一言お願いをします。

初めての起業(ファーストタイムアントレプレナー)という事もあり、まだまだ失敗も学びも多い月日です。創業当初、シリコンバレーで現地の起業家たちに「僕は起業家です」と自己紹介をするとよく「何社目だ?」なんてよく聞かれました(笑)。

それ位シリコンバレーで起業をしている人たちにとっては当たり前の事なんだな~と思いました。2社目の人もいれば、4社目の人もいるのですが皆がみな成功(Exit)できているとう訳でもないというのもよく分かりました。起業家が多い分Closedした企業も多いという事なんでしょうね。

自分の失敗談をお伝えすると、先ほどのお話にも通じますが、やろうとしているビジネス分野の市場規模(既存の売れているプロダクトの売り上げの総合計。)これをしっかりとリサーチする事がまずは大事だと思います。

投資家とのピッチの際も、ブロックチェーンや、AI、機械学習、など流行り言葉だけを使うのは全く意味がありません。投資家も沢山の「市場」を見てきていますので簡単に見抜かれてしまうわけです。

あくまで市場にどれだけのニーズがあるか?顧客がどれだけいるのか?その市場にペインはあるのか?あるとすればどれだけの対価(お金)が払われているのか?当然の事ですがここはしっかりとリサーチして頭の中に入れておくべきだと思います。

私は、三菱商事といういわゆる大企業から、対極的なスタートアップを始めたので人一倍苦労したかもしれません。失敗も多かったのかもしれません。大企業とスタートアップでは頭の使い方(マインド)、時間軸、手法など、本当に全く異なりますので・・・。

今大企業で働いている方であればいきなりスタートアップ始めるよりも一度スタートアップの会社に就職しマインドを設定するのもよいのかと思います。

後は、起業家やスタートアップで働いている方々とお会いしてアドバイスを頂くことをおすすめします。私も起業前に、色々な起業家の先輩や、スタートアップで働いている知人・友人にお話を聞かせて頂きました。皆さんとても忙しい中、様々なアドバイスを下さり、それが骨肉となっています。

最後は起業後のマインドですが、スタートアップすると他の起業家と比較してしまいがちです。ニュースやSNSで知り合いの起業家たちが、大型の資金調達を行なったとか、賞を獲得したとか、従業員を破竹の勢いで採用しているとか、そういうことと自分の状況を勝手に比較し、幻滅したり嫉妬したり。

しかし、そういう他人との比較が全く無意味なことに最近気づきました。一番大事な事は一人の人間として、一起業家として幸せとは何なのか?成功とは何なのか?世の中にいかに貢献していくか?という、他の人と比較しない、自分の絶対的な軸を大事にすべきだと思います。

自分の会社が上手くいっているかいないかなど、極論、どうでも良い。一人の起業家として、価値を追求し、自分の軸で世の中に貢献し、その成果を自身で評価していく。相手がどんなに著名な起業家だろうが駆け出しの起業家だろうが、自分が後に成功しようが失敗しようが、いつでもフラットに人と繋がっていく。

その中で、お互いどんな成長過程にあっても、良き仲間としてお互いに助け合う事が一番大事だと思います。私がお役に立てることがあれば、ぜひ気軽にご連絡ください。

真田 諒

2007年 明治大学商学部卒
2007年 三菱商事入社
2011年 アスデッサン共同創業者
2017年 ミシガン大学MBA取得
2017年 ConnecPath 共同創業者