Jenio 創業者 石井 大輔

石井 大輔 (Daisuke Ishii)さんインタビュー

Ycombinatorh日本人初としては、福山太郎さんがあまりにも有名だが今回は「あともう少しで福山さん」というところまでいった Jenio Inc.の石井さんに話を伺った。福山さんの記事はあふれているが試験に落ちた石井さんの記事は少ない。

 AIの世界に飛び込んだのが2015年、その3年後の2018年には最先端のシリコンバレーを目指し、YCのWinter2019バッチを受けた。

 その行動力とブログには書かれていない「本当はどうでした?」を聞いてみた。

*2015年One Traction でブートキャンプ(強化プログラム)に参加されました。

 2015年になりますがOneTraction(onetraction.vc)というアクセラレーターに受かったのがシリコンバレーに来た最初のきっかけとなります。

 そこで受けた指導がとても参考になり、Paypalのイノベーション担当やSpace Xの創業メンバーなど多くの人脈を作ることができました。当時はUberが未上場にも関わらず5兆円の評価額が出ているなど、アメリカ市場は日本のそれと比較しても規模の違いに圧倒された記憶があります。

One Tractionを通じて学んだことは

*投資家サイドからみた思考が初めて学べた

*アクセラレータ(起業家育成組織)の設立がブームになっており供給過多になっているので起業家側からすると昔よりもチャンスが多いように感じた

*インナーサークルに入るのが難しいという言われる、ある意味村社会のシリコンバレーで人脈ができた

3カ月間のブートキャンプを終えて一気にシリコンバレー進出したいという心に火がつきました。


*Y Combinator Startup School 2018*のバッチを受けられその後YC本選であるWinter2018の最終面接まで行かれました。


ブログで書いていないという意味では「まさか自分が最終面接までいけるとは(笑)」というのが正直な感想ですね。

 YCの合格者40%は過去に不合格の経験があり、私が受けたW19バッチにおいては、8回目の挑戦で合格をした人もいます。

 今回プレゼン用に作ったプロトタイプは、同時通訳の翻訳字幕付きのビデオ会議ツール(スカイプ(10億人のユーザーを抱える)と最新技術であるAIを組み合わせた内容)でした。定番アプリ「X=スカイプ」にAI「 Y」を組み合わせたプロトタイプを作ったのですが、リプレイス出来たら圧倒的な大きな市場を取れると感じて頂いた点が最終面接まで残れたポイントだったと思います。

 コアは2週間で完成させたのですが、面接当日までギリギリまでバグが直らずに焦っていましたね(汗)。我々は「AI」のカテゴリーでYCにアプライをしたのですが意外にもAIの分野でピッチした方が周りにも少なく優位に進んだと思います。

YC自体もAIは注目をしていると感じました。

 YCの雰囲気ですがYC自体が起業家、創業者の人たちで成り立っているアクセラレーターであり、Startup Schoolでメンター役に色々と質問してもほとんど的確な答えがすぐに返ってきたのがとても印象的でした。他のアクセラレータよりも質が高いと感じましたね。

 YCの面接自体約10分程度で、一次面接、二次面接(ともに面接官は一人)日本からのビデオ会議、、最終(三次面接 面接官は三人 マウンテンビューにて)と進んでいくのですが、一番突っ込まれた点は、「自分の製品を他の製品が真似て一気に市場競争が激しくなっていった際にどうやって生き延びていくのか?」この点を何度も何度も聞かれました。

 「あたなの製品はGoogleが明日作れる、その時はどうするのか?」こうした問にいかに論理的に相手を説得できるのかが鍵だと思いました。YCの特徴としては、500startupや他のアクセラレータ-と比較してもよりアーリーステージの起業家達も許容している事。

 実際にローンチしていない会社でも可能性がありそうなら合格させるのがYCだと思います。多くの日本人の方々が今後も合格してほしいと思います。

以下は実際のメールです。

(不合格通知: 引用)
Hi Daisuke,
Unfortunately, we’ve decided not to fund Kiara.
We originally thought XXXXXXX.
However, XXXXXXXXX.
We were not convinced that XXXXXXXXX.
Of course, we could easily be mistaken (we certainly have been before).
I encourage you to sincerely try and prove us wrong.
We would love to see you apply again.
YC
(引用終)


* 2011年頃から Jenio Inc. を立ち上げました。日本または渋谷からみたシリコンバレー、8年でどのように変化してきましたでしょうか?

 以前はビットバレー(渋谷)とわれていた事もありIT系の企業の数はここ渋谷が一番多いのかもしれませんが、米国や、欧州へ進出している企業がほんの僅かだと思います。

 多くの日本のIT企業は目がアジアの方に向いており、欧米に進出とうい水準までたどりついてなんだと思います。そんな中でもメルカリさんやスマートニュースさんのように米国で挑戦している企業は素晴らしいと思います。

 私も2015年のOne Tractionでの体験や昨年のYCでの体験をシェアしていこうと考えているのですが、なかなかシリコンバレーに行ったことのある人でないとピンと来ないのが実情です。

 先ほどアジアという言葉が出てきましたが、最近は中国などシリコンバレーにも日本にもないビジネスモデルが世界的に台頭してきているのでそちらの方に目を向けてきている企業が増えているのも事実かもしれません。

 時差や、移動時間、人件費、物価等コスト面で比較するとシリコンバレーよりも圧倒的に中国の方が安いですからね。

 例えばブロックチェーンの分野では、アメリカがマネーロンダリングを規制している点もあり欧州(エストニアやマルタ)の小国などが国をあげて力をいれており以前と比べてもアメリカ一極集中というわけでなくなっているのかも知れません。

 ただし新しい市場を生みだす力は、その市場をリードする力は、シリコンバレーが圧倒的に強いというのは今後も変わらないと思います。

 そういう他国を見ながら、日本も少しずつ変わってきているのかも知れませんが、規模的に中国ほど「多産多死」の仕組み化ができておらず、まだ海外に比べると失敗が許されないという文化につながっていると感じています。


*Kiara (リアルタイム翻訳を備えたビジネスチャットツール)開発経緯を教えて下さい。

 2018年夏からリモートワーク支援をテーマに仕事検索エンジンのプロトタイプを作っていました。その発展形として、いまではリモートワークに欠かせないコミュニケーションツールの領域に参入しました。

 リモートワークには言語障壁・勤怠管理(相手が働いているかどうか物理的にわからない)・モチベーション管理・国際的コラボレーションにおける時差などの課題が沢山あります。これらを一つ一つ潰し、リモートワークの生産性を劇的に向上させるダッシュボード(=SaaS)としてのポジションを世界市場で取りに行きます。

*既に起業をされている方々、これからビジネスを立ち上げていこうと考えている方々に一言お願い致します。


 今年で43歳になるのですが、40代過ぎてからの起業となるとやはり守るもの「家族」も出来てきて来るため、いきなり「ハイリスク、ハイリターン」のビジネスモデル飛び込めないのかな?とは自分でも感じます。

 新卒で伊藤忠商事という総合商社に入りましてそれから2011年に初めて起業したのですが、インテリア雑貨ショップやE-Commerceコンサルタントを5年ほどやっていました。ソフトウエア業界に入ったのは2013年でしたの、もう少しこの世界に早く入っておけばあと数年先を歩いていたとは思うのですが、こればかりは仕方ないですね。

(笑)20代で起業していればもう少しハイリスク、ハイリターンのビジネスモデルを作っていましたね。そういう意味では起業はお早めに!

 またシリコンバレーは世界中の情報が集まってくるので、もし自分の興味のある業界のカンファレンス、EXPO、Meetup等がベイエリアである場合は積極的に参加されると良いと思います。

 
 チケット代も結構高いとは思いますが、ベイエリアにはその業界の数年先の様子や、風向きなど行かないと感じることのできない事もたくさんあります。


 海外の中期滞在もオススメです。米国ならESTAなどを利用すれば最大90日は滞在できるわけですし、私も2014年はイタリア・スペイン・アメリカそれぞれに3ヶ月ずつ住んで仕事をするデジタルノマドでした。

 やはりローカル産業の強みやビジネスカルチャーを深く理解する事ができ、1週間の通常出張などと比べてその国への理解度が非常に深まったと思いますし、人生の転機にもなりました。

 野球・サッカーでも海外活躍選手が、結果的に日本代表の実力を押し上げていますし、世界最高の競争率のシリコンバレー・ベイエリアへの挑戦者が一人でも増えるといいなと思っています。

 皆で勝つための情報提供は今後も積極的にして行きたいと思いますので、お気軽にお聞きください。一人でも多くの日本人起業家が成功する様に願っています。


石井大輔 プロフィール 

1998年京都大学総合人間学部卒
1998年伊藤忠商事入社 大阪、東京、ミラノ、ロンドン
2011年オフライン小売店 Jenio Incの前身創設
2012年商社(新規海外ブランド獲得エージェント)
2013年クロスボーダーECの事業開発
2015年米国市場向け日本の商品のEC
2016年AI受託開発
2017年AI人材紹介
2018年自社AIソフトェア開発