Cyber Agent Capital  南出 大介

daisuシリコンバレーにスタートアップが多い理由の一つとして、支援する側のVC、エンジェル、CVC、アクセラレータの数が世界トップクラスだからだ。

起業家も生き残りを掛けてビジネスをするなら、支援する側も生き残りを掛けての支援という事であり、「起業家も投資家を選ぶ」と言われるのはこうした理由からなのかもしれない。

過去10年は確実にVCの投資件数と投資額が増えている。

ITバブル崩壊後、スタートアップ数、投資件数、投資額は増え続けており、日本からシリコンバレーに進出している企業数に関しては過去最高の913社となっている。

そんなシリコンバレーで、2019年1月1日から Cyber Agent Capital(旧Cyber Agent Ventures)と社名を変更し、新たな挑戦を続けている南出 大介さんにVCの視点でお話を伺った。シリコンバレーには2008年に赴任。11年目となるベテランVCに全て語って頂いた。

流行りをおわず、多角的に企業を分析する重要性、起業家も投資家をしっかり選ぶ」など経験から学ばれた言葉を頂いた。

シリコンバレーで11年の実績があり、過去には4社をExitに導いている。

*2008年6月にドコモキャピタルとして初めてシリコンバレーに赴任をされております。日米のVCの違いなどどう感じられますか?

通常VCの方々は皆さんPartnerと呼ばれていますがそれぞれ自分の得意・専門分野を持っています。特にアメリカでは自分が起業をして、IPOもしくは大企業に売却したり、大企業で事業を立ち上げたりするなど「その道のプロ」である人たちが多く、半導体あがりの方は、半導体に投資。

モバイルあがりの方はモバイルに投資と、専門分野に特化して投資をするパターンが多いのが特徴です。

一方日本のVCの方々はより業界を大枠でとらえており、銀行や証券会社など金融の投資部門あがりの方が多いのが特徴だと思います。

私は、モバイルでの経験があったので、アメリカのVCにより近いスタイルを取っています。

*Cyber Agent CapitalはCVCのカテゴリーになりますか?

我々 Cyber Agent Capitalは親会社のCyber Agent が100%出資の会社なのですがいわゆる日本のCVCとは違い、よりアメリカのVCに近い形で活動をしています。

投資した案件には100%リターンを追求していくスタイルで、他のCVCのように、本業との協業となる案件を探したり、斬新な技術を取得するために投資というのはやっていません。「事業としてやってるVC」と考えて頂ければよいです。

シード、アーリーステージのインターネット分野に特化しています。

更にブレイクダウンをしていくとIOT、モバイル、ブロックチェーン、AR、最近ではSmart City等を対象にIOTビジネス全般でプロダクトをしっかりと作っているスタートアップなどをチェックするようにしています。

インターネット分野というのもかなり広い意味になってしまうんですがね(笑)インターネット自体は今はすべてのものに繋がっていますので、ハードも(IOT)という意味では投資対象になっています。

逆に対象外のジャンルとしましては、メディカル、ライフサイエンス、バイオ、エネルギー こういったジャンルは投資していません。私に知見があまりないので・・。

Evernote (2009 Series A),  Fond (2012 Seed)等過去16社ほどの投資実績があり、そのうち4社(Boostable,Gizmoz,Remotium,URX)がExitされています。

*Evernoteさんとの出会いを教えて下さい。

Evernoteさんとの出会いは2008年ころだったと思います。

当時は、Docomo Capitalの社員として赴任したばかりの時期だったのですが、Evernoteという斬新なサービスに出会いました。これは「面白い」という事でしばらくリサーチをしていました。「時代の流れにあっていた」というと後付けの話になってしまいますが、2006年にiphoneが発売されて、GoogleがAndroidを開発し、デバイスのあり方が変わっていき、「これからスマホをどうやって使っていくか?」という議論が盛んな時期でした。

当時CEOのフィル・リービンも過去2度のEXITを経験しており、Evernoteがスマホで使えるようになればヒットすると考えていたのですが、まさしく成功事例となりました。

*南出さんの投資ポリシーを教えて下さい。

自分のテーマは先ほどお話した分野を中心にリサーチをかけています。更にブレイクダウンしてお話をすると

①情報のインプット(収集)

②情報のプロセス(多角的に解析・分析)

③アウトプット(ソリューションとしての最適化)

過去のアナログ情報を全てデジタル(インターネット)上に集約できないかと考えているのですがその投資先の一つとして Dashという会社があり、自動車の情報を吸い上げ様々なソリューションを提供しています。

またVidoraというサンフランシスコにある会社に投資をしているのですが、Big Data,Machine Learningの会社で、一言でいうと「Subscribe」をしていてる人たちがいかに「Charn (=unsubscribe)」にならないかをデータ収集して、それを解析し事前に策を考えて提案をするとう事をしています。多くの企業は subscribeをいかに増やすか、確保するかに力を注いでいると思いますので

①、②があたると思います。

後は、バイネーム(by name)という言葉があるようにVCの業界では、どの会社に属しているというよりもその人がどういったスキルを持っていて、どういうスタイルでビジネスをしているかが非常に重要になっています。「自分のブランド」をしっかり持つことに常日頃から心がけています。

*失敗談などありましたら教えて下さい。

僕もいくつか失敗例はあるのですが(笑)、流行りにのったらダメだとおもいますね。

2014年にシード投資をした Valet Anywhereという会社があるのですが、SFダウンタウンに行った時などに「パーキングを探すのが面倒」という事があると思うのですが、このサービスを使うと自分の車まで人が車と取りに来てくれて、Valetしてくれて必要な時に必要な場所まで車をもって来てくれるというサービスを提供していました。

 

Uberが流行り始めた際に「オンデマンドサービス」というキーワードで沢山のサービス(Doordash , Rinse)が出てきたと思うのですが、まさしく「自分があったらいいな~と思ったサービス」が目の前にあったので思わず飛びついてしまったのですが、その後は・・・・・・。

リサーチ、分析を徹底的に行うべきだったと反省しています。

自分なりに「なぜ失敗したのか」を考えたのですが、オンデマンドサービスの中でも生き残れる企業とそうでない企業の差が「人」にあると気付いたのです。

Uber、Lyft、Valet Anywhere、Doordashも全て「人」の取りあいなんですよね。そうなると最後は「資金力」がものをいう。そこをしっかり分析できていなかったので失敗になりましたが、その業界の構造をしっかりと「多角的に分析する」という事を学びました。

サービスを開発しただけではなくて、Workforceをどうやって永続的に確保していくのかなども重要ですよね。最低賃金がどんどんあがっていますので。

二つ目はプライシングの設定ミスもあったと思います。Valet Parking サービスを提供するわけなので「付加価値分のプライス設定」をし、その資金をWorkforceにあてていくという方法がよかったのだと思いますが、実際は安い料金設定をして行き詰ってしまいました。

スタートアップで生き残れるのは本当に上位3社までだと思いますのでそれを探すのはなかなか難しいですね。(笑)

*最後に起業家の方々に、投資家探しのポイントを教えて下さい。

アメリカの投資家の方々はそもそもその業界で成功した専門家が多いという話をさせて頂いたと思いますが、彼らは起業家からも投資家は選ばれる、という事をよく理解しているので本当に勉強をしていますし、その専門分野に関しては詳しいと思います。

自分がどういう業界で起業をするのか?その業界に詳し投資家をしっかりと探すのがポイントですね。投資家もTwitterやブログなどで情報を発信していますし、関連のイベントに参加すれば沢山の情報を得られると思います。

そして起業家も投資家を選ぶ事が大事です。よく言われますが、投資は、「結婚」と似ていて一度 株を渡したら、「別れたくても簡単には別れられない」というのが事実です。

本当に慎重に選んだ方がよいです。これもまた難しいですけどね。(笑)

南出 大介  medium.com/@dminamid

主な投資実績

Dash、Evernote、Feed.fm、Fond、InsiteVR、MoBagel、

Seed Labs、Vidora、Boostable、Gizmoz、remotium

Selfieclub、TuneWiki、URX、Valet Anyhere

1997年中央大学理工学部卒

1997年NTT Docomo 国際事業部・マーケティング部

2004年Purdue University Krannert School of Management

2008年Docomo Capital としてシリコンバレー赴任

2013年Cyber Agent Ventures 参画