7月10日水曜日、パロアルトにある Wilson Sonsinigoodrich & Rosatiにて SVIF 7月定例講演会が開催された。冒頭会長を務める諏訪氏から「フィンテックという言葉が聞かれて久しいが、再度ブームが来ているこの時期にテーマとして取り上げ、過去のブームと何が違うのか学ぶ必要があると感じた。」というお話しがあった。
テック、テクノロジーという言葉が世の中にあふれるようになってから、造語が続々と出てきている。
バイオテック(Biotech)、エドテック(Edtech)、アグリテック(Agritech)、アドテック(Adtech)、フードテック(Foodtech)、リアルエステートテック(Real estate tech)と数え上げればきりがないが、皆さんの多くも一度は耳にしたことがある言葉ばかりだと思う。


今回は、フィンテックという言葉に注目し、ベイエリアの金融業界を長年見てきた、日米のコンサルティング業務に携わっているCando Advisors代表の安藤 千春氏、Blueshift Global Partners代表の渡辺 千賀氏のお二人の講演となった。
安藤氏の主な業務は、日本の企業と米国スタートアップ企業とを提携させるコンサルティング会社であり、主にはを中心としたベンチャーの発掘、パートナーシップ戦略立案・実行サポートとなっている。今回の講演では米国の大手金融機関がどのようにフィンテック対策をしているかについて話があった。

業界に長い経験をもつ安藤氏らしく、オンライントレーディング初期のお話も披露。「紙芝居オンライントレード」と言われる昔の手法では、トレーディングカンパニーが、実際には画面をプリントアウトしながら裏でFAXを証券取引所に送っていた時代もあった裏話などもして頂いた。
4~5年前までのフィンテックブームは、日本の大手金融機関は「まだ様子見」という状況だったが、ここ数年は、フィンテック企業と「業務提携するか、コンペティターとなるか」という選択肢を迫られている所まで来ているという。

*米国の大手金融機関がなぜフィンテックに対応しなくてはいけないのか?
*その具体的戦略とは?
との問いについては、ミレニアム世代(米国で、2000年代に成人あるいは社会人になる世代。1980年代から2000年代初頭までに生まれた人達の総称)の金融機関への非来店化、オンラインバンキング化の動きが顕著になっていると説明。

具体的戦略としては、エンジニアの大量採用、既存社員のトレーニング強化、フィンテック企業のM&Aを矢継ぎ早に実施しており、日本の金融機関はまだまだ動きが遅いと警告する。
一方渡辺氏も、約30年前に三菱商事に入社した時から、米国のスタートアップをリサーチし続けているベテランのコンサルタントだ。「ここ最近はスタートアップ企業が止まって見える!」と語り会場の笑いを誘った。その実力者からのアドバイスは、「投資情報をしっかり見て、カンファレンスを活用せよ!」という話があった。お金の流れ(投資情報)を掴むこと、カンファレンスに積極的に参加することにより、効率的に情報を収集し、興味のある企業にリーチする事で、基礎知識や体力をつけることが有効だと説明した。

渡辺氏は、Blueshift Global Partners以外にもSVOI (Silicon Valley Open Innovation)という団体を運営しており、カンファレンスに集まる企業を投資情報を精査して事前にリストアップ活動も行っている。
その他Goldaman Sacks では、以前は600人いたトレーダーが今では2名しかいないお話を披露。その代わりに200名のエンジニアを大量採用しUI,バックエンドを自動化し来るべきフィンテック競争に備えているという。その若きエンジニアにいかにGoldamanのカルチャーに馴染んでもらえるか?これが目下の重要課題のようだ。

その他、$10億以上の投資を受けている最近のフィンテック企業紹介では、Synapse 、Offerpadをについて取り上げた。また、直近5カ月(2月-6月)では、フィンテックの中でも不動産のカテゴリーが最も多く投資を受けているとの事。

最後は、サンフランシスコに拠点があり、2015年9月にはソフトバンクグループからの出資も受けているSofiを紹介。低率ローンと、高いデポジットレートの組み合わせで多くの顧客を大手銀行から奪っている。FDICにも加盟しており、破産時も$1.5millionまでカバーされているカラクリを説明した。(通常は$25万まで)

お二人の話を聞いて、フィンテックの波は、過去のブームよりも確実に進んでおり、今後もそイノベーションのスピードは確実にアップすることが分かった。関係企業にとっては、まさしく「待ったなし」の状態だ。