将来的には両国の経済は楽観視できないという見方が大半を占める米国と日本。
過去数年の記録を見る限りは、両国ビジネス渡航者数の数は過去最多数となっている。
国別でみると1位 米国357万人、2位 中国258万人、3位 韓国229万人。
2位以下は、日本の近隣諸国が占めるなか、距離や時差など日本からはほど遠い米国の人気が改めてデータからも伺える。
統計から見ても海外へ行く機会が多くなった日本人。よりスムーズな現地での滞在を過ごす手段の一つとして「移動手段」が挙げられる。
今回は、過去の移動手段(タクシー)をテクノロジーで刷新したサンフランシスコに本社があるUberを分析してみた。今回初めてシリコンバレーを訪れる機会があり初めてUberを使用した日本在住の筆者の観点から今後米国へ出張を予定しているビジネスパーソン向けに書いている。
Uberとは?
多くの日本在住の読者には、「Uber eats」として料理配達の意味としてその存在を認識している人も多いだろう。日本におけるUber eatsのビジネスは好調で、今後も業績は伸びていくと予測されている。
しかしUber eatsを運営しているUberTechonologies は配車からそのビジネスを始めている。(日本では規制によりサービスがわずか1ヶ月で中止となり、現在は一部のエリアでしか使用できておらず、地方に住む方などその名前を聞いたことのない人も多いはずだ。)
意外にも日本では、羽田空港~東京都23区内の一部に限定して使用できる。
エリアが限定されているという点では、まだ「規制」という大きな壁を乗り越えられていないようだ。
来年2020年には東京オリンピックを迎える等訪日外国人が増える環境にあり、日本もスムーズな移動手段などを用意する必要がある。
一方、Uberが運営しているもう一つのサービス Uber Eats。配車サービスというよりフードデリバリー会社というイメージが日本では大きい。
既に米国ではなじみのサービス(2014年8月にサンタモニカでサービス開始)だが、日本でサービス開始されたのは2016年9月28日。利用エリアも同社WEBサイト上では、主な東京23区内と一部地域と書かれいるが実際には、千葉、神奈川、埼玉、名古屋、大阪、京都、兵庫、福岡などの地方大都市でもサービスが可能のようだ。配車業務よりもフードデリバリーの方が認可が降りやすいのかもしれない。


米国におけるUber(配車)の使い方
Uberの使い方を5つの手順でまとめてみた。使用する際は参照していただきたい。
(1)スマホにアプリをダウンロードし、アカウント登録を行う
名前(現地の人にもわかるようにローマ字で入力しておくこと)、個人情報(電話番号、email/password)、決済情報(クレッジトカードなど)の入力が必要になる。
Email/password入力が必要な点は個人情報が抜かれているようでかなり不安な気がする。
(2)位置情報の設定をオンにして、目的地を現地言語(英語)で正確に入力する
2019年9月現在、目的地の設定方法は入力以外に設定されていない(音声入力や地図をタップするなど)、アプリを使用しないときでも消費電力が増えないか不安になる。
(3)現在地から目的地までの配車種別料金が表示される
Poolは相乗り車種なため最も格安でオススメ。EconomyやPremium、高齢者向けのサポート付き車種など種類は豊富。
(4)希望車種を選択し、配車を待つ
通常5分以内に到着する。ドライバーとの通話も可能である。
(5)配車キャンセルや遅刻は、別途料金が発生するので注意が必要である
誤った目的地の入力や、ドライバー評価、金額など配車前にはしっかりと確認することが推奨される。
Uber(配車)に乗ってみた感想
日本では基本的に配車サービスが行われていないが、筆者がシリコンバレーにて体験したUberの感想をまとめてみた。
あくまでCtoCプラットフォームであるため、感想は地域・時期・個人差などが強く影響することを考慮していただきたい。
ポジティブレビュー
(1)事前のクレジット決済なので、乗車後の面倒な料金のやり取りがなくスムーズ
(2)場所と時間によるが、5分以内に配車される上に、アプリ上で現在のドライバーの位置情報がわかるので、安心である。
ネガティブレビュー
(1)(あくまで日本と比べて)急発車急ブレーキなど運転が荒く車酔いする可能性がある
(2)車内の雰囲気は完全にドライバーに依存するが、静寂な空間になったり異臭を放っていたりなど、少しきまづい
(3)(日本のタクシーに比べPoolの場合)15分の乗車で約500円、60分の上乗車で約2000円と割安だが、基本的な物価が高いので、料金的にはお得感は少ない。
(4)良くも悪くも交通状況に強く依存する
(5)(決められたマークがついたタクシーと異なり)配車される車のナンバーを確認し、「あなたは〜ですか?」とコミュニケーションを取るなど、乗車前の乗車できるかどうかの不安が大きい
Uberの将来性
(1)創業ストーリー
Uberのビジネスモデルの原形となったUber Cabを設立したのが2009年3月。コンラッド・ウェラン、オスカー・サラザー、ギャレット・キャンプの3氏により設立。
その後、カラニック氏がCEOに就任したのは2010年12月。ギャレットとカラニックは毎年行われるカンファレンスLeWebにて2008年に出会う。そこでタクシー業界の問題を体験し、この課題を解決できる方法はないかと、ニーズプッシュのイノベーションを構想していた。
トラビス・カラニックは、1978年にカリフォルニアに生まれ、UCLAでCS・ビジネス経済学を専攻し、その後中退。1998年にはインターネット検索エンジンサービスなどを提供するScour Inc.を共同設立し、2001年には同様のP2Pファイル共有会社としてRed Swooshを設立、実質4社目の創業がUberになっている。

ギャレット・キャンプは、1978年にカナダで生まれ。カルガリー大学で電気工学・ソフトウェア工学を専攻していた。卒業後SNS企業のStumbleUponを設立し、Uberは2社目の創業となる。

トラビスは現在Uberを辞任しており、今後の活躍が期待されている。ギャレットは取締役として今後、Uberを今後どのように発展させていくのか注目されている。
(2)ファイナンス分析
2019年5月10日(米国時間)にNASDAQに上場を果たしたUberだが、8月8日(米国時間)に行われた4~6月の四半期決済によると、31億ドルの収入に対して52億ドルの損失を計上し、依然として赤字経営が続いている。詳しく四半期報告書を元にファイナンスをみていくと、粗利率の低い(=原価率の高い)サービス構造であることがわかる。
これは米国では年々失業率が低下しており、ドライバーへの高い支払い料を計上しているためであると考えられる。また80%近くのSG&A比率を計上しており、平均10~30%に抑えているGAFAと比べると、マーケティング費用に巨額投資をしておりLyftなどの直接競合他者や、Doordash,Postmates,Grubhubなどの間接競合他者との顧客・ドライバー獲得争いに苦戦していることがわかる。
(3)今後の展望
Uberの筆頭株主は、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(100億ドル)である。しかし、前述のように現状のファイナンス状況だけをみるとGMなどを超える約700億ドル(7兆円)の時価総額は割に合わないだろう。なぜビジョンファンドをはじめとする投資家たちはこのようなファイナンス状況にも関わらず、Uberを高く評価しているのだろうか。2つの視点から予測する。
1つ目として、自動運転による高収益ビジネスへの転換が挙げられるだろう。
現在のファイナンスを悪化させている原因として、原価の高さを指摘した。しかし、仮に自動運転が実現できたらこの原価が人件費という変動費ではなく、システム化という固定費に変換され、限りなく節約することができるだろう。さらに固定費は規模の経済により節約がより加速すると考えられる。このように考えると、Uberは一気に化けると推測できる。その一つとして既にWEBサイト上では、Uber Air構想が公開している。
2つ目として、O2Oビジネスとして配車プラットフォーマーのナレッジを別業界に有効活用してくることが挙げられる。
例としてUber EatsとフィリピンにおけるUberビジネス活用事例を取り上げる。まずUber Eatsは、O2O構想をうまくマッチングサービスとして活用している。オフラインマッチングからオンラインマッチングへと時代は変化し、今後オンラインとオフラインが融合していく中で、食料配達のプラットフォーマーとして競争優位性をもつだろう。
また、昨今話題の車中広告においても優位性を発揮できる可能性を秘めている。例えばUber認定ドライバーに車中にタブレットを取り付けさせるなどすれば、広告費をドライバーにも還元するという名目で、一気に広告業として成り上がることができるだろう。
文責:金子 裕太