米国にお住みの皆さんは、2000万円不足問題をご存じでしょうか。
2019年の6月3日金融庁・金融審議会の市場ワーキング・グループが報告書「高齢社会における資産形成・管理」で“公的年金だけでは老後に2000万円不足する”とした内容の報告書を発表しました。
2017年度の家計調査によると、退職した元会社員と専業主婦の高齢夫婦無職世帯で毎月21万円弱の年金収入に対し、支出が26万円強。毎月5万5千円が足らない状況が30年続けば2000万円が不足するという問題。
報告は、どんなに工夫しても老後は2000万円不足するという不安感=年金への不信感を若年層に与えてしまいました。2018年の総務省の「家計調査」では65歳以上の世帯の貯蓄残高の平均値は2292万円ですから貯蓄は不足額の2000万円以上あることを強調できたはずです。
米国に滞在中の在留邦人の方も、住民票を日本に残している方、国民年金に継続加入の方、国民健康保険に加入している方、そうでない方と様々です。
2004年年金制度の大改正(マクロ経済スライドの導入等)の際、政府は「100年安心年金」と呼びました。安心とは年金制度の持続性が高まったことを表現したのですが、国民には安心=生活保障ととらえられ、野党から「100年不安心年金」と攻め立てられました。今回の報告書は国民の老後生活への準備の大切さを訴え老後に必要な資産形成の自助努力を促すことが目的でしたが予期せぬ展開となってしまいました。
もとよりに日本は、老後の生活を政府がすべて保障する仕組みにはなっていません。「年金は将来も大きな収入源で持続性もある。しかし退職生活をすべて賄うことはできないから若い時から資産形成の努力はしてください」と正論を明確に伝えるべきだったのですが2000万円不足が独り歩きしてしまい、それが年金制度への更なる不信となってしまったことは残念です。
その点アメリカのSSAは毎年年金加入者に送付している年金計算書「Your Social Security Statement」の1ページに「年金は大半の米国高齢者にとり最大の収入源です。しかし年金は退職後の唯一の収入源であるということは意図していないことを知ることは重要なことです。年金だけでは豊かな老後の生活は送れず、各自、預金、投資、他の年金の加入等、快適な老後の生活を送るための計画が必要である」旨の注意喚起を発しています。
米国での個人年金には、IRAや401Kが有名ですが、元本を超えても加入者がなくなるまで一生涯年金が受け取れる点で唯一の方法と言われています。
米国で長年住んでいる永住組の方、短期滞在予定の駐在の方、国や会社に頼らずまずは自分でソーシャルセキュリティーと日本の年金について知識を深めて下さい。
人生100年時代の長いライフプランの対策を、海外にいる今から考えておく事がとても重要です。
今後の私の投稿が少しでもそのお役に立てば幸いです。
海外年金相談センター
市川俊治