シリコンバレーの起業家が坐禅にハマる理由

坐禅は、体で考える

シリコンバレーの起業家では、セールスフォースのマーク・ベニオフ、オラクルのラリー・エリソンなど親日派、知日派は数多いが、特に坐禅の火付け役となった起業家の一人としてスティーブ・ジョブズは有名だ。

世界の曹洞宗の僧侶の数(僧籍登録されている僧侶数)は北米に322名、欧州に353名、ハワイに5名、南米に71名が在籍していると言われている。(20181231日現在)

特にシリコンバレーに限った話をすると、到るところで坐禅に参加できる場所がある。日本人・日系人であれば、サンフランシスコ日本町にある桑港寺。そして、20192月にサンマテオ市に事務所を移転した曹洞宗国際センターだ。

2019年2月に移転した曹洞宗国際センター。現地の禅センターへの指導やサポート、法話の会や参禅会等様々な活動を行っている。
月曜日~金曜日の午後1時~2時、坐禅会を実施しており。坐禅に興味のある方ならどなたでも参加可能。(実際に坐禅をする時間は30分前後)
月曜日~金曜日の午後1時~2時、坐禅会を実施しており。坐禅に興味のある方ならどなたでも参加可能。(実際に坐禅をする時間は30分前後)

 

今回は、曹洞宗国際センター伊藤 大雅(たいが)さんと森 香有(こうゆう)さんに話を伺った。



*坐禅をするとやはり自分が変わったり、気持ちが楽になったりするのですか?

伊藤さん:坐禅をすると変わるのでしょうか?と聞かれる事がよく有りますが、そもそも何かをする為に坐禅をするのでは有りません。坐禅をしたからといって何も得られないかもしれませんし、何かを得られるかもしれません。一言でいうと「自分次第」です。

ただ坐っているだけですから。() この何もしない、坐ってただ息をする時間がとても大事な事だというのが曹洞宗の考え方です。自分を苦しめるきっかは自分にあります。忙しい毎日から少し立ち止まって、自分を見つめ直す時間が持てれば、少し自分に余裕が持てるのではないでしょうか。

森さん:忙しい日々だけを過ごしていると、つい周りの景色が見えなくなってしまいます。周りの景色をゆっくり眺める為には、しっかりと自分を見つめ直す時間が重要です。そんなに難しく考えずにまずは、坐ってみて体感して欲しいですね。

*曹洞宗がアメリカで布教を始めたのはいつ頃からになりますか?

曹洞宗北米での歴史は、1922年ロサンゼルスから始まります。1922年にLAのリトル東京に禅宗寺1934年にサンフランシスコに桑港寺が現地の日系移民により建設されました。2022年で北アメリカ曹洞宗国際布教100周年を迎える事になります。

1960年当初から、カウンターカルチャー(対抗文化)が世界的なブームとなり坐禅がアメリカにおいて特に、20代の若者を中心にブームになったと言われています。大きな家や、新しい車といった「物」を所有する事が幸福の条件だった時代から、それが「心」へと変わったのがこの頃だと思います。

そうした時代の変化によって「坐禅」に共感してくれる現地の方が増えたという事は間違いないと思います。特に坐禅は、ただ坐るだけ。こうした分かりやすさが若者の間で受け入れられたのだと思います。

その頃、サンフランシスコの桑港寺で6代目住職をしていたのが鈴木俊隆(すずきしゅんりゅう)老師*(1905-1971)。鈴木老師が桑港寺で坐禅会を始めた頃、世間的なブームもあり多くのアメリカ人の若者が集まり、坐禅に取り組むようになったのです。

鈴木老師は、アメリカ人の若者が桑港寺以外でも坐禅が組めるようにと、全米初となるサンフランシスコ禅センター(1922年設立)を作り、アメリカ人が集えるようにしました。

今では、鈴木老師の生徒達の多くが独立して各自の禅センターを作るなどしており北米だけでも200を超える禅センターがあります。その多くがカリフォルニア州にあり、スティーブ・ジョブズが禅から受けた影響は少なからずあったのかもしれません。

そして、スティーブジョブズと特に交流が深かったのが、乙川弘文(おとがわこうぶん)老師で、二人の関係は、「ゼン・オブ・スティーブ・ジョブズ」の本を読むと参考になります。



鈴木俊隆老師プロフィール

神奈川県曹洞宗松岩寺出身

1959年渡米し、桑港寺第6代目住職

1962年サンフランシスコ禅センター(発心寺)創設

1967年タサハラ禅センター(禅心寺)創設

1972年グリーンガルチファーム禅センター創設

*国際センターの歴史を教えて頂けますか?

1997LAにある両大本山北米別院禅宗寺内に開設され2000年にサンフランシスコ桑港寺内に移転、今年20192月にサンマテオに移転いたしました

シリコンバレーに移転をしましたので、今後はより多くの企業への布教活動も積極的に行なって行きたいと思います。

また、現在の所長はアメリカ人僧侶のゴッドウィン建仁師であり、現地の禅センターからの期待が非常に高まっております。

ゴッドウィン建仁所長(写真中央)

*アメリカには曹洞宗のお寺は何箇所あるのですか?

現在、曹洞宗の日系寺院は北米に3箇所、それ以外に登録されているお寺、禅センターは50箇所あり、登録されていない禅センターは200箇所以上あります。北米以外では、ハワイ10箇所欧州50箇所、南米15箇所ヨーロッパにも北米同様に登録されていない禅センターや禅グループは、無数に存在しております。

*禅センターという言葉がでてきていますが、ここでも坐禅会などは実施しているのでしょうか?

禅センターは、日本のお寺のように法事やお参り等の文化を担っているところではなく、主に修行生活をしながら一般の方がたへの参禅会などを行っています。ベイエリアで坐禅を組める禅センターは数箇所あり、日本人が対象ではなく現地のアメリカ人の参禅者がほとんどです。住み込みの方がいたり、宿泊施設が併設されている所もあります

サンフランシスコ禅センターにある宿泊施設

ベイエリアにある禅センターリスト (曹洞宗公式禅センターのみ) 

サンフランシスコ禅センター (アメリアで最初の禅修行センター) 

グリーンガルチ禅センター 

タサハラ禅センター

好人庵禅堂

バークレー禅センター

ソノママウンテン禅センター 

慈光寺禅センター

観音堂

タサハラ禅センターは、毎年4月からゲストシーズンを開始します。温泉が湧いている事もあり保養地としても有名です1986年頃には、スティーブ・ジョブズもタサハラ禅センターで乙川弘文(老師)の下、坐禅の指導を受けていました。

グリーンガルチファームは、毎週日曜日の朝は一般公開されており、坐禅会に参加頂けます。近くにトレイルなどがありビーチまでのハイキングも楽しめます。

*最後に一言お願いします。

坐禅は家でもできます。まずは坐ってみてください。

坐禅体験を終えて※

国際センターの仏間兼坐禅室は8名が入れる程度の狭い空間で、一歩足を踏み入れると心が静まる落ち着いた感じがする。半分目を閉じ、腹式呼吸をし、30間坐っているだけで背負っていた荷物が少しだけ軽くなった気がする。

時代の変化について行こうと、日々走り続けているが中々前には進まない。起業家の多くは常に問題を抱え、会社の業績がアップダウンするのと同じく心も不安定になりやすい。時には坐って、自分の心を安定させる事が会社の安定した成長にも繋がるのかもしれない。