日本とメキシコの架け橋を作る
全日空が2017年に直行便を開始し現在メキシコ-成田線を結ぶ直行便は、アエロメヒコと全日空の2社体制となった事で日本からの渡航も飛躍的に増えている。
世界遺産に登録されているグアナファト市街
トヨタ、マツダ、日産、ホンダなど多くの自動車メーカーがメキシコ国内に生産拠点を持つなど日本人の業務渡航も年々増えている。日本から進出している日系企業の数は1117社にのぼる(2017年JETRO調べ)。
メキシコの在留邦人数は、11775名 ( 2018年10月現在外務省調べ)で世界の国別在留邦人数で19位(トップ3は、アメリカ、中国、オーストラリア)となっており対前年5%の伸び率だ。
危険、英語が通じない、日本人のメキシコへのイメージは、諸外国と比べてあまり良くないかもしれないがそれをチャンスと捉えてメキシコに渡ったのが株式会社 Encounter Japan( Encounter de Mexico Japon S.A de C.V )の西側赳史氏だ。
2015年にメキシコに渡り、2016年に日本とメキシコで会社設立。現在は日墨で35名程の社員を抱える企業までに急成長している。
なぜ、メキシコで起業だったのですか?
起業する前は、日本の総合商社の一つ双日で中南米向け自動車関連のトレーディング事業やベネズエラでの子会社管理に携わっていました。その仕事を通して将来的に中南米市場が日系の自動車メーカーにとっても重要な拠点になると確信をしたのです。
昔のタイのイメージにが近いのかと。日系の自動車メーカーが工場を立ち上げると、それに伴ってサプライヤーが進出。その後、広告代理店、保険会社が追随。日本食レストランがオープンし、日本語学校、総領事館が開設するという流れを双日の仕事を通して肌で感じました。
幼い頃から経営者だった祖父に憧れていた事、学生時代に1年半ほど海外を放浪した経験の中で、不可能の幅が極端に狭まった事、ゼロからイチを生み出す仕事の楽しさを感じ事、これらが20代のうちに海外で起業する自分を突き動かしました。
双日に入ったのも、海外の放浪の旅を通じて「中南米と関わりの強い仕事が出来る会社で働きたい」と思ったことがきっかけでした。10代後半、20代前半での放浪を通じて中南米の人や文化に魅了されたんです。
ビジネスモデルを教えてください。
Encounter Japanは、居場所創生運営部門、クリエイティブ部門、輸入卸部門、メディア部門の4部門から構成されています。まずは、居場所創生運営部門であるレストラン事業。渋谷に En Counter Shibuya、メキシコのグアナファト市にレストランと宿泊施設を併設した、Hostel & Bar Encounter Guanajuato。そして昨年2018年7月にはレオン市に今までで最大規模の日本食レストラン Goenを立ち上げました。

グアナファト州は、ホンダ、マツダが既に工場を稼働させており、トヨタが2019年末にも本格稼働するなど、在留邦人数も急増しているエリアです。それに伴い2016年1月グアナファト州最大の都市、レオン市に在レオン日本総領事館が開設されました。2019年11月9日には、総領事館、オビエド学院と共催で「Tú y Japón」を開催し大盛況に終わりました。
今後も日本とメキシコの架け橋を作るお役に立ちたいと思います。
そしてクリエィティブ部門では、CM動画やドキュメンタリー動画、グラフィック制作をメインとしながら、中南米市場を対象としたマーケティングを行っています。日本人とメキシコ人のセンスやアイデアを融合しながら、クリエイティブソリューションを企業向けに提供しており、昨今ではメキシコに拠点を持たない日系企業の方々から様々なご相談を受けるようになりました。
輸入卸部門では、広島県の「ますやみそ」の商品を中心に、中国地方の良質な日本酒や味噌、加工食品等を取り扱い、主にメキシコシティ市内のホテルや日本食レストランへの卸売販売を行っています。
メディア部門では、メキシコに住む日本人やメキシコに興味のある日本人へ情報を届けるメキシコ総合情報サイトamiga(アミーガ)の運営。メキシコの観光、治安、ニュース、グルメなど多岐に渡る情報を提供しています。amigaを通じた人材紹介事業も今後、開始していく予定です。
これらの4部門がメキシコ内3拠点に分かれて活動をしております。営業、クリエイティブ部門(6名)があるメキシコシティー。Hostelと日本食レストランを経営しながら、経理とデザイナーが在籍(10名)しているグアナファト市。そして最大規模のレストラン Goen(17名)のあるレオン市です。社員数は全部で35名程度となっております。
メキシコには起業家は多いと感じますか?
そうですね。日本からメキシコに乗り込んできて、起業をしよう!という人達は正直あまりいないかもしれませんね。笑
私もメキシコでビジネスを立ち上げて4年が経過しますが競合他社は殆どいない状態です。まだまだブルーオーシャン状態が続いています。
メキシコは日本と同じ約1億2,000万人の人口で、富裕層も多く存在します。他国と比べて中国資本の企業や華僑も少なく、社会問題も多々存在するため、言語の問題や日本との距離などのハードルは存在しますがそれだけチャンスや可能性が転がっているという事だと思います。メキシコで起業とは前人未踏の事ばかりですが、中南米が好きで、かつ「メキシコで起業したい!」と思う方がいればぜひメキシコをオススメいたします。が、簡単な市場でないことも事実です。
メキシコで起業するメリット、デメリットはなんですか?
ヒスパニック系の人口は、アメリカなどでも総人口の17.4%を占めるなど人口が増え続けています。拡大し続ける市場をターゲットにする事は、重要な事だと思っています。
一方、非常に難しいのがファイナンス面。日本やアメリカと比較すると資金調達面では苦労します。銀行から借入するにしても金利が非常に高いですし(政策金利7.5% 2019年11月14日現在)、日本のエンジェルや、VC、CVCと行った投資家でメキシコ、中南米市場に目を向けてくれている人達が少ないのは事実です。
メキシコでビジネスをしている我々がしっかりとその魅了を情報発進して行かなくてはならないと認識しております。
そして、人材確保の問題です。これはどの国でも通じる事かもしれませんが、日本人の若いスタッフをを採用する場合などもありますが、英語が思った以上に通じない、生活水準が想像以上に低かった、というメキシコ生活の現実が心理的な負担になっているスタッフも見受けられます。彼らがいかにメキシコという国において楽しく働いてもらえるか?将来、成長して行けるか?そういう事を会社として更にバックアップして行きたいと考えております。
メキシコ人も英語を話すのは少数派。言われた事をやる事には長けているのですが、自分から物事を考えて解決していくという事は苦手なのかと感じています。ただし弊社のメキシコ人の役員を始め、社員の皆は日本人のイメージとは異なり、真面目に働いてくれる人々ばかりです。
時々、メキシコで出会う日本人や外国人からは「メキシコ人が働かない、すぐ辞める、不真面目だ」という声を聞きますが、それは間違いなくマネジメント側に問題があると考えられます。
結局、日本でもアフリカでも、中南米でも、育ってきた環境はそれぞれ異なるために違った価値観を持った人々が存在しますが、重要なのは確りと心を開いて、お互いをリスペクトしながら、お互いの強みを活かしつつ真摯に業務に取り組んでいくことが重要だと感じています。
西側さんの当面の目標は?
「日本とメキシコの架け橋として、我が社のヒト、モノ、バショを通じて人々の人生を豊かにする」ことがEncounter JapanのMissionです。既存事業の拡大や既存顧客の満足度向上は勿論のこと、今後もミッションから逸れずに沢山のことにチームでチャレンジしていければと思っています。
実はメキシコにも、取引高で世界ランキング26位のメキシコ証券取引所があります。
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日本人社長で初のメキシコ証券取引所での上場は、勝手にロマンを感じている部分があるので(笑)、目指していければと考えています。
今後の資金調達を通じてお金をどんな分野に重点的に投資をしていきたいですか?
既存のレストランビジネス、広告ビジネスもまだまだスケールさせる必要がありますのでそういった事業の規模を大きくしていきたいと考えております。
それから、我々のビジョンの中に「日本とメキシコの架け橋」とういキーワードがあるのですが今までのビジネスモデルは、日本→メキシコがメインでした。
今後は、メキシコ→日本というビジネスモデルも強化していきたいと考えています。
日本の国籍別労働者の割合は図の通りアジアからの労働者がトップ3位を占めています。
かろうじてブラジルが4位ですが、中南米からの労働者を画期的に増やして日本の労働市場をガラッと変えていくような取り組みもしたいです。
我々が日本に持つ店舗に派遣をするのも良いのですが将来的には、人材派遣という形で外国人労働者を必要としている日本の企業に派遣していきたいと考えておりまして、過去にも広島や鹿児島、秋田の企業にメキシコ人スタッフを研修生として派遣した事などもありました。受け入れ先企業からも大変好評なコメントを頂きましたのでこの分野には需要があると考えております。
米国ではトランプ政権に変わったことでメキシコ人を中心としたヒスパニックの方々は米国での出稼ぎから強制帰国させられています。実際、メキシコ国内でUberに乗った時、つい最近までは米国で生活をしていたが、メキシコに帰国せざるを得なかったとドライバーとの会話の中で聞くことも多く、米国からの仕送りで家族を養っていたものの現在は仕送りができずに困っている人々を見てきました。
誤解を恐れずに言えば、現在の米国は「メキシコ人たちは米国から出て行け!」といった風潮がある中で、米国以外に出稼ぎの選択肢が示されていないのが現状です。メキシコから日本への直行便もデイリーで2便飛ぶようになりました。未だクリアなイメージは出来上がっていませんが、Encounter Japanとして何か彼らに対して機会提供が出来ないかと案を練っている状態です。
ただし昨今、問題となっている低賃金での外国人労働者、研修生の派遣を行ったものの彼らの生活水準があまりにも低く、日本のことが嫌いになってしまった、という声も少なくありません。
将来的にこの分野に取り組むのであれば、弊社で確りと業務に取り組んできたシェフやデザイナーなどの人材を、地方の高級料理店やホテルなどで働くシェフとして、また人材不足が謳われているデザイナーを紹介、派遣して彼らが一定の給料を得て、かつ日本のことを愛してくれるようなきっかけとなる企業に限定して紹介を行っていければと考えています。
国を問わず起業を考えている若者に一言アドバイスをお願いを致します。
外国で起業を考えている際は、現地の人々をリスペクトしながら働くことは簡単なことばかりではないですし、想像出来ないトラブルが発生することもあるため、使命感を強く持たなければ乗り越えられないほど辛いことを経験することと思います。
ただし日本人が世界で貢献できる事は、沢山ありますし、私も含めて日本人の若い方々が海外で挑戦し、結果を出して現地の社会や従業員に対して貢献していく、リターンしていくことは、我々の子供達や、将又孫の世代が海外に出た時に感じる「日本人って素敵だよね」「日本のこと大好きです」というイメージを創り出すことに繋がっていくと信じています。
世の中はどんどん便利になってますし、起業も以前と比べれば一般的になった昨今だからこそ、空いてない宝箱を見つけるのは難しくなっていると思います。それでも、メキシコや新興国と呼ばれる国で起業することは、空いてない宝箱が未だ沢山残っているはず。辛いことや孤独を感じる時間もありますが、ロマンを追い求めて、少しでも多くの人々が海外で挑戦するようになればと期待しています。僕も引き続きメキシコ、中南米の地で努力を続けていきます。一緒に頑張っていきましょう!