知らないと損する日米の年金制度Vol4- グリンカードを放棄しても配偶者にも半額の年金がもらえるってホント!?

日本と米国の年金制度を比べると、当然ながら類似点もありますし相違点もあります。その中で米国年金の場合、一番驚かれかつ喜ばれる事は、年金受給者の配偶者の方にも年金が支給されしかも年金額が受給者の半分も貰えるという事です。

年金受給者のAさんは、現在の標準退職年齢(NRA Normal Retirement Age)である66歳から年金月額1,000㌦の年金を受け取り始めました。

その時点でAさんの奥さまは、年齢が63歳。標準退職年齢までそれから3年待って66歳から受け取りを開始すれば500㌦の年金が終生受け取れることになります。

Aさんのご家族としては、1500㌦の年金がその後毎月受け取れることになります。一方、奥さまが63歳ですぐ受け取りたい場合の年金額は25%(最初の36か月の繰上げ退職月に対しては、繰上げ月数×25/36%の減額)減額となり375㌦となります。

Aさんのご家族としては、1375㌦がその後毎月受け取れることになります。奥さまの年金受給手続きは年金の加入者であるAさんの手続き後、基本的に個別にする必要がありますのでご注意ください。

日本の年金制度の場合を見てみますと、配偶者への年金は「加給年金制度」がありますが、年金受給権者が原則20年以上にわたり厚生年金保険に加入していたことが条件であり支給期間も配偶者が65歳までの期間限定です。

しかも配偶者の口座ではなく年金受給者の支給額の中に含まれて支給されます。65歳以降は条件を満たせば「振替加算」として配偶者へ引き続き支給されますが金額は少額に留まります。

その意味で米国年金の配偶者への半額支給は大変ありがたい制度であると言えます。夫婦平等の精神が反映された制度ですね。

さて、そんな素晴らしい年金制度も永住権(グリンカード)を放棄したり米国籍を放棄したりしたらその受給資格を失ってしまうのではと心配になりませんか?

老後は、日本でというプランを立てられている方も読者の中には多くいらっしゃるはずです。

年金受給者がそのいずれか(永住権、米国籍)を放棄した場合、年金受給者の配偶者も年金受給権が失効してしまうのではと思ってしまいます。でもご安心ください。

米国年金は受給条件さえ満たせば、国籍やビザには関係なく受給できます

つまり、日本に帰国して米国籍やグリンカードを放棄しても米国年金の受給には全く影響がないのです。余談ですがもし上記のAさんが亡くなりになった場合、その奥さまの年金額の500㌦は1000㌦に改定され遺族年金として支給されます。

また、Aさんの1000㌦がWEPによる減額後の年金額であった場合減額は無くなります。Aさんの減額前の年金額が1300㌦であれば奥さまの遺族年金の額は1300㌦となります。残された奥さまにとりせめてもの贈り物ですね。

WEPとは米国の年金受給者が日本の年金を受給すると米国の年金が一部減額されるという規定です。次回2月掲載号にて更に詳しく説明致します。

 

海外年金相談センター

市川 俊治