知らないと損する日米の年金制度Vol7-国籍の選択について

2014年のノーベル物理学賞の受賞者、中村修二氏がノーベル賞のプロフィールにAmerican Citizen と紹介されたことで、中村氏はアメリカ人なのか、日本人なのかと話題になったのを皆さん覚えていらっしゃいますでしょうか?

(少し前の話題ではありますが・・。)

 

中村氏は「研究の予算を得る必要などから米国籍を取得したが日本国籍を捨てたわけではない」と説明し、中村氏自身はまだ日本国籍を持っている認識のようでした。

日本政府からは安倍晋三首相が『赤﨑勇氏、天野浩氏、中村修二氏に本年のノーベル物理学賞の受賞が決定しました。日本人として20人目、21人目、22人目の受賞を、心からお慶び申し上げます。』というコメントを出しています。

首相としては、中村氏は日本人との判断なのですが実際はどうなのでしょうか。結論から言いますと、中村氏は法律上、日本国籍はすでになくあくまで米国籍者です。でも中村氏は日本で生まれ日本で学び日本で研究したわけで祖国愛というか郷土愛の対象は当然日本なのでしょう。また安倍首相が中村氏も含めて受賞者3名を日本人と称したのは首相としての立場上もさることながら中村氏と同じ感覚で発言されたのでしょう。

この例を取りまして日本の国籍法を改めてチェックしてみたいと思います。まず国籍唯一の原則(国籍法16条1項)が大原則として規定されています。日本国民が自己の志望により外国の国籍を取得した場合は、日本の国籍を自動的に喪失します。また、外国の国籍を有する日本国民が、その外国の法令に従って(例えばその外国が日本と同様な国籍選択制度を有している場合に)その国の国籍を選択した場合も、日本の国籍を喪失します。

なお、自己の意志で米国市民権を取得する場合は、その時点で日本国籍を失いますので二重国籍とはなりません。例えば、米国グリーンカード保持者が米国市民権を取得した場合は、米国市民権取得時点で日本国籍を自動的に喪失しますので、二重国籍者ではありません。

ですから日本国籍の方であった方が米国籍を取得されてから良くおっしゃる“自分は二重国籍者です”は“自称二重国籍者”であり法律上は日本の国籍は既に喪失しているわけです。仕事や生活の必要性から米国籍を取得された方も日本に対するパトリオティズム(郷土愛、祖国愛)は変わることが無いのですね。

先日も米国に10年近く住んでおられる方から周りの方から米国籍の取得を薦められ、深く考えずに取得しまったが、日本では二重国籍は認められないのか?といった相談がありました。

日本国籍を放棄して、米国籍を取得するメリット・デメリットをよく理解したうえで対応することをお勧めします。

在アメリカ日本大使館の国籍に関する詳しい情報は、こちら

 

海外年金相談センター

代表 市川俊治