今こそTakachiho Americaのアイデンティティを確かめる
小野江氏が駐在員として最初に渡米したのが2008年5月。リーマンの破綻が同年9月15日、その影響を受けた数多くのシリコンバレーのスタートアップが倒産していくニュースを毎日の様に目にしたのは、渡米後わずか半年の事だった。
渡米後間もなく小野江氏の上司に突然の帰国命令が下された。
「そのうち私にも帰国命令が出るんだろうな」と予感したという。しかし、諦めなかった。多くのシリコンバレーの駐在員事務所が閉鎖、駐在員が帰国をする中、常に「チャレンジング」な姿勢を忘れず、今自分が何をすべきかを冷静に判断した。
景気のどん底からの米国駐在人生がスタートし、見事に生き残り這い上がってきた数少ない日系駐在員だ。
奇しくもその時の状況と今回の新型コロナウィルスの状況を比較すると、「非常に似ているし、それ以上に長期化するかもしれない。」と語る。
高千穂交易は、1960年代にニューヨークにオフィスを展開。80年代にはシリコンバレーに拠点を移し、多くの商社の中でもアメリカでの長い歴史を持つ技術商社だ。
現在は、シカゴ・オヘア空港近くのアイタスカ市に米国拠点を設け、地の利がよい中西部から北米全体を管轄する。
中西部は、自動車業界を含む製造業等の大工業地帯が広がる。全米の製造業のうち約3割が中西部12州に集約されており、コロナウィルスの影響による、これらの工場閉鎖は、地域経済に深刻な影響をもたらすと懸念されている。
5月5日現在では、ミネソタ州の一部の製造、工場、事務職の一部(約10万人)は、職場復帰が可能になっている。製造業では、在宅勤務が困難な為、地域毎の事情を考慮し経済再会に向けた新しい動きが他州に先駆けて起きているように見受けられる。
一方、テックカンパニーが多く存在するシリコンバレーの状況はどうか。カリフォルニア州の外出禁止令は引き続き継続されており、シリコンバレーを含むベイエリアの6郡においても5月末までの自宅待機命令が確定している。
普段から在宅勤務に慣れているテック企業やその社員であればスムーズに業務が進むと思われがちだが、知人でサンブルーノ市のYoutubeで働く社員からも「在宅勤務になっているが、なかなか同僚とのコミュニケーションがうまく取れず仕事がはかどらない。」という声も漏れてくる。
今回は、リーマンショックの苦境を見事に乗り越え、社内起業を実現。世界がどう変ろうとも「常にチャレンジングな気持ちを忘れない」と語る小野江氏に今後のビジョンについて伺った。