知らないと損する日米の年金制度Vol10-日本の公的・私的年金改革法成立

日本の公的・私的年金の改革法が2020年5月29日成立しました。これは厚生労働省が5年に1度実施する年金財政検証(2019年)の結果に基づく改革です。

厚生労働省発表のHPは、こちら

検証では今後とも少子高齢化傾向が続くため、例えば所得代替率が2019年の61.7%から2043年には約50%になったしまうことが示されました。

 

その為、対策として厚生年金の適用者の拡大で加入者を増やしたり、高齢者の就労を後押ししたりすることで年金保険料の増額を計る等改革を進めるというものです。

所得代替率とは、公的年金の給付水準を示す指標で、年金を受け取り始める時点(65歳)における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合か、を示すものです。

たとえば、所得代替率50%といった場合は、そのときの現役世代の手取り収入の50%を年金として受け取れるということになります。以下、公的年金に関して主たる改正点(4項目)を説明します。

1.繰り下げ受給開始時期の拡大

原則65歳に受給開始される年金は現在最大70歳まで受給開始を繰り下げることが出来ますが、2022年4月以降、75歳まで繰り下げを延長できるようになります。施行日時点で70歳未満の人が対象です。

1カ月繰り下げるごとに0.7%増額されるのは現行通りです。70歳まで繰り下げると42%、75歳まで繰り下げると84%増えた金額が終身受け取れます。繰り下げ期間中は年金の受給は停止します。

もらえなかった金額を受給開始後の増額で取り戻せる年齢(損益分岐点)は、何歳で受給開始した場合も受給開始後12年です。

つまり70歳受給開始なら82歳、75歳受給開始なら87歳となります。
損益分岐点がそんな先なら繰り下げる意味があるのかと疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。そこで平均寿命と平均余命で検証してみましょう。

厚生労働省の2018年簡易生命表によれば、日本人の平均寿命(0歳時における平均余命)は男子82歳、女性87歳です。65歳の平均余命(ある年齢の人々が、その後何年生きられるかという期待値のこと)は男性20歳、女性25歳ですから、65歳の平均寿命は男性85歳、女性90歳となります。

この為、65歳の方が70歳まで繰り下げた場合、平均寿命から損益分岐点の差は、男性は3年間、女性は8年間のプラスとなります。プラスとは65歳で受け取るより70歳まで繰り下げた方が男性の場合3年分年金を多く受け取れるということです。

一方、75歳まで繰り下げた場合の同様の差は、女性は3年間のプラスですが、男性の場合、2年間のマイナスとなります。その為男性の繰り下げ年齢は最大72歳までの選択となります。平均寿命が僅かに損益分岐点を上回るのが男性の場合は72歳ということです。

なお、厚生年金を繰り下げれば「家族手当」ともいえる加給年金(条件を満たせば年額390,100円)がもらえないなどの注意点もありますのでご注意ください。

次回8月号に続きます。

 

 

海外年金相談センター

代表 市川俊治

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